【果ての家族】12話「三人の黒騎士 2」

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1

 我々は黒い騎士団がいるとされる森へ行こうとした。しかし、おかしい。
 どうも転移系の力がうまく使えない。どうやら、ダイデスは転移対策に大量の結界を張り巡らせたようだ。なるほど、軽く行こうとしても無理ならゴリ押しか。
 私は原初の力で転移した。
 視界が町から森へと変わった。
 うっそうと広がる森でとても人がいるような感じがしない獣道だった。

「道を間違えたか?」

 私は口に出した。

「ひいいいいいいい!!」

 奥から男が大きな声で泣き叫んでいた。私たちはその声の方向へと進む。
 男がはりつけにされて5人の武器を持った男女に囲まれていた。男女は皆、黒い服で動きやすいような感じだ。しかも肌に傷をつけないよ肌を隠している。

「お前、どこから来た?」

 男がナイフをはりつけにされた男の首に突き立てた。

「お、オイラは金に困ってあんたらの本拠地に行こうとしたんす!!」

 どうやらはりつけにされているのは泥棒のようだ。あさはかだったのか捕まったらしい。

「我らの領地で盗みを働き生きて帰れると思うな」

「そ、そ、そんなダンナァ……あっしは盗みを3度しか……」

「とぼけるなよ大罪人」

 後ろで本を読んでいる黒縁メガネをかけている女が口にした。

「お前は盗み39回、殺人50回。お前はどのみちここから逃したとしても再犯の可能性は否定できない」

「で、でも……」

「お前のカルマは見逃せない。よって、ここで死に絶えよ」

 槍の穂先が心臓のある左胸に向けられた。

「ま、ま、ま、待ってく……」

 有無を言う前に男の左胸は心臓と同時に貫かれた。呼吸は止まり体はピタリと止まった。

「死んだか」

 メガネの女が口にした。

「お前たちはこの男を丁重に葬れ。悪人と言えど死体がぐらいは丁重に葬らなくてはいけない。
 それと」

「はい」

「私はここの見回りをする。お前たちは死体を持って本部へ戻れ」

「了解!」

 4人の兵士は死体を担いで去っていった。残ったのはメガネの女だった。
 しかし、みょうだ。あの女は他の兵士と比べてこっちを見ていないか? 気のせいか?

2

「そこのあなたたち、いるのでしょ?」

 やっぱり気づいているか。私とシウは隠れるのをやめた。

「よく気づきで。なぜ、兵士を呼び止め……」

「呼び止めると被害が増えるでしょ。最小限に抑えるためまっとうな理由で逃したと言うことにしました」

「なるほど、なぜ私達がわかった?」

「彼らにはあなた達を感知するほどの魔力はなかった。私にはあったのです」

 あった……。まさか、いや予感がする。

「そして、あなたは……」

 女が1ページをめくり字面を見た。

「果ての神、大海の覇姫シウですね」

「!?」

 こっちのことがあの本で知られている。強力な異能使いか。

「……お前」

 シウが口を開けた。

「この異能を使うやつはダイデスの配下にいたな」

「いたか?」

「親父は忘れているけどな。いるんだよ」

 ダイデスの配下? 誰だっけ。

*3
「本を使い相手の心や知識、しかも相手の体も本にするやつがいた。かつてあった次元戦争で大勢の敵を本にしてしまいには世界を本にしたというやつか」

「名前は?」

「ダイデス直下の配下「死神」の特上級“冥”の称号を持つ死神。冥書シンディア」

 それを聞くと女は本を閉じた。

「ふふ、さすがはシウ様。私をご存知で」

「お前の力でこっちの配下が助かったね。でもな、ここを……」

「シウ様」

 シンディアの目つきが変わった。

「私の主ダイデスは言っておりました。この森を越えて館に向かう者はどんなものであろうと容赦するなと」

「親、兄弟でもか?」

「はい、お帰りください」

 その時、シウの額に血管が浮き出た。

「うだうだ言ってんじゃねえぞこのクソ死神が! 原初神の前でんなことが通ると思ってんのかよ!!」

「通ります。ダイデス様も原初神です」

「そいつの姉がアタシなんだよ! 通すのがどおりだろ!?」

 自らを右手の人差指で指差しながら強調するシウ。

「ダイデス様は言っていました。姉のシウ様、ソス様は常に不機嫌な方々で取扱が難しいと愚痴をこぼしていました」

 それをきいたシウの背中からさらに青い蒸気が出てきた。これは気の一種でシウの場合は龍を作る。

「あのクソ霧野郎! 調子に乗りがって!!
 いいな、いいな、いいなあ、いいなあ、いいなああああああ!!
 すげえムカつく気分だ。ぶっ飛ばしてやる。覚悟しろよシンディア、体を引き裂いてやる!」

 シウは前へと進んだ。