【果ての家族】17話「三人の黒騎士 7「マリア」」

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1

 マリアが家出をする1年前のことだった。マリアが館の周りを散策している時に道端でボロボロの男がうつ伏せで倒れていた。
 マリアは心優しく男に治癒魔法を使い治療した。男は立ち上がる。

 

「助けてくれてありがとう。何か欲しいものがないのか?

 

 と話すも。

 

「いいえ、ありません」

 

 無欲だったので無かった。

 

「そうか……また会うかもしれないけどじゃあね」

 男は去った。
 夜、夢の中で男とマリアは再会した。

 

「あなたは? 今日の……」

「私は下級死神「断絶」のミリオ。標的を始末したが予想外のダメージで不死が追いつかず苦しんでいたところをあなたが助けてくれた。どうか、マリアさん。何か……」

「ありません」

 

 マリアは当然、何もなかった。そこに、ダイデスがあらわれた。
 巨大な骸骨でマリアは恐怖した。ダイデスは恐ろしげな声で言った。

 

「我らは助けたものにどうしても恩を返したい。頼む、なにかあるのか?」

「いえ……ありません……」

 

 マリアはそれでも断った。だが、ダイデスも引かなかった。

 

「ならば、お前がもし困ったことがあるのなら我を呼ぶがいい。条件はお前が極限にまで困ったときだ」

 

 マリアはダイデスと一時的な契約をすることにした。

 

*2

 

 数週間後、マリアはラグナロク帝国への視察に行く。理由は父がラグナロク帝国の現状を知るためである。見たが絶句した。
 国民は考えることをせずただ崇拝している。しかも生活など一切考えず「祈ればそれでいい」とまで思っている。愚かな現状維持である。
 上層部はただ暴利を貪り何も変えず変えようとするものたちを殺すことばかり。腐敗しきっており変える以外にない。しかし、自分ひとりでは無理だ。そうだ、ダイデスに頼もう。
 その夜、マリアは夢でダイデスと会った。

 

「ダイデス様、お願いです!」

「何だ?」

「ラグナロク帝国を消してください」

 

 ダイデスは突然、考え込んだ。

 

「マリアよ、お前はことを簡単に進められると思うか?」

「え?」

「この願いは実に長期的だ。1日で倒したとしても他の者達への被害を考慮して不幸になるものが多い」

 

 確かにこの出来事を起こして不幸になるものが多い。カルマ刈りに適したものばかりだがそれらを刈りとるも依存している人間が多い。

 

「ならば、帝国へのパイプを我が作ろうか」

「え?」

 

 ダイデスは自らの兵士を送ってパイプを作ることにした。ダイデスは非番の死神たちを呼んで顔を変えて帝国内にいる「上層部に位置し重要な役職や地位を持ちカルマが高い者」を選び刈ってすり替える。
 結果として裏側から死神の力を使った。
 次に組織を作る。秘密組織「黒の騎士団」。目的は「崩壊した後の帝国の短期的な再建に役立つ優秀な人材育成」。これらを半年で作る。結果として優秀な人材を輩出し帝国をじょじょに乗っ取る。
 そして、黒の騎士団が最も表立った行動へ出ることにした。しかし、これで大勢の人間が死ぬため神罰事変が起こる1ヶ月前にマリアに新しい契約をする。
 お前の家族が大事になるよう黒の騎士団の指揮権を与える。ただし、マリアはあまり向いていないのはわかるためこちらもそれ相応の者を育てる。
 マリアの知識や技術力の吸収量は異常だった。姉のアルティを超えており格闘すらも強い。相応の力をつけて黒騎士となった。代替えのものは違う場所へ移動。不服では無かったそうだ。
 そして、神罰事変を起こし帝国を全て乗っ取った。
 あたから見れば神の裁きだが入念に計画されたもので食料の配給も行き届く。暴徒を出さないよう前もって治安強化に当たっていたので少人数だけすんだ。
 後は国民次第で良き国となるだろう。

 

*3
「それが、お前の行ったことか」

「そうだ。我がしたのは帝国にいる害虫共の排除と排除後の事を考えて動いた抑制だ。
 これにより帝国は安定をもたらすだろう」

 

 なるほど、1年も計画していたのか。

 

「まあ、裏側を知ればあることに気づくがな……」

「裏側?」

「我のやっていることは王国への肩入れだ」

「肩入れ?」

「そうだ。ラグナロク帝国とスラヴァ王国はおたがいに仲が悪い。
 それは統一されていたロゴゴ大帝国にまでのぼる。大帝国が分裂し現在も争っている。火種を削り取った分、王国にとって都合が良くなったものだ……」

 

 確かに残った問題は外交問題か。この点は内政よりさらに難しい。

 

「しかし、我とてそう簡単に策を捨てたわけではない。
 こうなるだろうと考えてものづくりの知識を与えている。何かしらある知恵を使って作るだろう」

 

 今を生きる人間が問題を解決させるしかないか。

 

「して、父よ」

「そうだな。マリアは家に帰らせてもらう」

「だが、ここえまた帰ってきてほしい」

「どうしてだ?」

「黒い騎士団の団長はマリアだ。我はその補佐として活躍している」

「……」

「この意味がわかるか?」

 
 そうか、もうマリアは違うのか。

 

「わかった。とりあえず依頼だから家に帰らす」

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