【果ての家族】1話「荒野からの脱出」

2017年1月22日

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*1
 この世にはどうがあいても力で負かすことができない強力な存在がいる。知恵比べを除けばの話だ。
 多くの世界が存在する混沌にその者はある世界に引きこもっていた。やることもなし、ただひびを惰性にむさぼる馬鹿者。ゲーム、農園、建物作りとさぞ創造に高尚な趣味を持った物だがやはり長続きはせず寝ることしかない。まさにニートともいえる物だ。
 それが、そのものだ。その者は今日も惰性をむさぼり暮らしていた。
 この物語はこの惰性をむさぼる者とそれに関わる人々の愛あふれる話であると考える。
 ただ、この者の名前は何だったのか忘れてしまった。なんだけ。

*2
 青い空の下、植物が生えない待ったいらな地平線に私がいた。
 んん暇だな。こうやで寝ているばかりで田植えもしたけど簡単に目が出て簡単に成長してしまう。プラモを一から作っても簡単に作ってしまう。ああ、退屈だな。どこか世界旅行に行こうと思うけど行ったところばっかりだしな。
 暇で青いスライムになってクネクネしているけど特段変わったことは起きない。

「あああああ!! 暇だあああ!!」

 どうしよう! マジ困った!!
 やることなさすぎてどこ行こうか困った。あいつが囲っている世界はもう全部行ったし次はどこの行こうか……あ、そうだ。
 まだ未登録の世界があるはずだ。忙しすぎて囲い切れていないのが多い。よし、閲覧するか。
 私は目から大量の星が見えた。これが世界である。世界を見ているといろいろと文字が表示されて名前もある。

「ええと……あの世をレンタルしている世界はあいつが管理しているから除くか。でも、気になるし入れるかな。
 アラヤ月界、火焔鳥界、サーバ世界。すごい世界もあるもし大変だな。
 ……あれま。何これ?」

 変な世界を見つけた。外見は青く丸い世界で名前は「三度世界」。
 世界設定は魔法あり、多種族、魔法世界であるが化学は発展途上。近年において火薬の発明により銃を開発可能な技術まで上ってきた。
 あの世レンタルはあるのだがおかしい。魔力、神力、霊力の濃度が高すぎる。これ、普通なのかな? 世界守護者たちが見ても見過ごすわけにもいかないし調査されているのか?
 でも、変だ。作られてから一万年経っている。通常は千年経てば調査が開始されて守護者が判定を下す。合格ならその世界は神の管理がよく住みやすい世界だが、失格なら住みにくい世界とらく印が押される。
 なのに判定が無い。

「なにか妙なことが起きるかもしれない。ちょっくら行ってくるか」

 紫色の穴を開けて私は青い色のスライムから人型へと変わった。小作人のような姿となり顔はわりと美形で金髪。

「戸籍が無いだろうしもぐりこんでも大丈夫だろう。下手な小細工を使わずに済む」

 私は穴の中へと入った。紫ばかりの空間で奥へと進む。長く眠たくなるようだ。
 光が見えて見えた先には草原が広がっていた。青い空で太陽が見える。山が無いな。

「あ、ああ」

 ん? 後ろから声が聞こえた。振り向いてみた。

*3
「お、お姉さん……アルミラお姉さん……」

 二人の赤髪の女性だ。一方は背が大きくもう一方は背が小さい。見た所、身分は高そうに見える感じがだ。

「こ、この人……魔法使い?」

「いや、それっぽいけどそうでもないけど……」

 魔法使いと勘違いしているようだ。私はそんながらじゃないし……。

「なんだか、来て早々ばっくりあってしまったようだ。まあ、悪い人じゃないよ」

「魔法使いさん!!」

 小さい方が何か言ってきた。

「え?」

「とつぜんですみませんが!! あなたに魔法を教わりたいです!!」

 はぁ? 来て早々これはないだろ。

「何だって魔法を教わりたい?」

「ダメよアルカ!! いくら魔法だなんてそんなこと高額なお金と時間が……」

 やはり、どこの世界でも同じか。魔法使いを学ぶために費用と時間が必要だ。見た所、アルカと言う少女は魔力を帯びている。しかし、私の眼の力によってアルカの記憶を除けばたいして魔法の鍛錬はしていない。
 なるほど、才能を腐らせたくないから学びたいか。

「どいて姉ちゃん!
 魔法でいろんなことが学びたいからです!!」

「ア、アルカ!!」

「そうか。本来なら何年も必要なことだが、今回は特別に秒速で終わらしてやる」

「え? 本当?」

「もちろんだとも一気に才能を開かせてやる」

 私はアルカに指示を出した。アルカを正座させ目をつぶらせた。私の右手の人差指をアルカのひたいに当てた。すると、アルカがすさまじく光った。

「ア、アルカ!?」

「静かに。集中している」

 光るが消えると私はアルカから指を離しアルカは目を開けて立ち上がった。

「気分はどうだ?」

「ええ……何か変わった感じがする」

「そうか。試しにどこにでもある攻撃創造魔法「剣の法」を試してみろ。それも詠唱破棄か」

「え、詠唱破棄!?」

 アルカの姉は驚いた様子だ。

「何を言っているのですか!? いくら才能をこじ開けたからと言ってそんな詠唱破棄だなんて高等なことを……」

 無理もない。魔法使いには三段階にわけて強さの証拠がある。詠唱あり、詠唱破棄、無詠唱。
 詠唱ありは魔法を詠唱すること。
 詠唱破棄は魔法の最後にある言葉「魔法名」を言う。ただし、威力は落ちるが速効性はありより上。上級者へ駆け出す中級者の必須項目。
 そして、無詠唱。まったく詠唱せず、魔法名を言わず奇襲して相手を倒す。戦略性にたけて最も重要な実技の1つで習得している者は上級魔法使いのみ。どの世界でもそうだ。
 この姉が驚くの無理はない。それだけに難しいのだ。

「いや、それができるのですよお姉さん。詠唱破棄が簡単にできるのさ」

「ほ、本当!?」

「ええ。ささ、やってみて」

「はい。剣の法」

 すると、アルカの目の前にある草の上から紫色の魔法陣があらわれた。魔法陣から白い剣の刃が見えて全体を出し最後はつかを見せて紫の魔法陣は消えた。
 アルカはそれをとり振った。間違いない、その剣は本物の剣だ。

「す、すごい……。これ、本物?」

「ああ、本物だ」

 アルカの姉にそっけなく答える。
 アルカと姉には見えないが、タネを明かせばこうだ。私はアルカの中に魔力よりも高いエネルギー「神力」を入れた。これにより魔力で本来なら扱うのが難しい魔法も神力があれば恐ろしいほど早く使えるようになる。
 それと、魔法の基礎~応用までの知識を与えた。これを肉体に刻み込んでいるからあとは本人の腕しだいだ。

「それじゃあ、私はこれで」

「待ってください魔法使い様! どうか、私たちの村へ来てください!!」

 はぁっ!? 今度は、お前たちの村だ? いや、こっちは世界旅行へ来たのに何をしろってんだ!!

「おいおいおいおいおい。こっちはもう終わっているだろ。もう、お前たちと何の縁もないはずだ。
 私はそろそろどこか別の場所へ……」

「だったら村でもいいでしょ。それより、家はありますか?」

「家なんてない」

「そうですか……私たちの家に空き家があります。貸してもいいよねアルミラルお姉ちゃん!」

「好きにしなさい」

 アルカの姉は迷惑をかけたと思い「ごめんなさい。こんなばか妹でもうしわけございません」と謝りたい気持ちでいっぱいだ。

「それで、魔法使い様。名前は……」

「え?」

 やっば……。一番くだらない部分が来た。
 産まれてこの方、名前をつけられたことがないから会う人によって名前が変わる。
 どうしよう……うん。あ、そうだ。
 よく言われる「果ての者」で「ハテ」かな。

「ハテ」

「ハテさまですか。いいですね!」

 私は姉妹に連れて行かれた。どんな町だろうか。