【果ての家族】5話「大海の覇姫 3」

*1

「さてと、変なのが海中に浮いていますね。面倒だから潰します」

 シウの抑えていた力を解放した。

「あ!?」

 アルカの結界が破壊されて行く。アルカは動作が遅くこっちに近づけない。
 やむを得ない、私から行く。
 アルカを自らの結界に入れて守り右の片手に抱きかかえた。

「すみません……」

「気にするな。これで、わかっただろ。お前には想像もつかない戦いが起きるというのを」

 そうだ。これが、果ての人とその子供たちだからこそなせる戦いが始まる。

「さあ、始めますかね」

「あらあら、お父さん。通常のお父さんならハンデ無しで殴ってくるけど、そんな娘を連れてきたのは致命傷でしょうね。
 なにせ、邪魔なものじゃないかしらね?」

「う……」

「ああ、傷ついちゃった。でもさ、連れてきたのが間違いでしょ?」

 アルカの心から砕きに来たか。だがな。

「なあにシウ。お前なんぞ少女一人を抱えて戦った方が案外いいハンデじゃないのか?」

 シウの顔がムスッと赤くなった。

「言ってくれますね……。いいでしょう! 戦いましょう!!」

 しかし、どうすればいいのか。右手がふさがっている状態で左手か。
 シウの左手が白くなり枝分かれしてたくさんの触手に変わった。

「うふふふふ……」

 不敵に笑うシウ。あれはシウが得意としている白い触手か。本来の姿もあれを使うが、やっかいだ。

「捕まっていろよ!!」

「え、はい」

 シウの触手が伸びて襲いかかった。私はすばやく回避し逃げる。シウの隙をうかがおうと思ったが、シルはすばやく右腕も触手にして岩を砕き襲いかかった。結界で触手をはじいたが、これが普通の結界なら壊されてもおかしくない。それに。

「な、なんですかコレ!?」

「そうだ。やつの触手で一番恐ろしい能力だ」

 結界に黄色い液体がつき離れていない。これは、シウの触手についてある毒。この毒にふれた即死亡するほどの威力を持ち、全身に痛みが走り体全てを腐らせる。しかも、触手でつかんでくるから毒の効率はおそろしいほどだ。
 アルカが助からず溺死することもあるが、何よりあの触手に捕まればもだえ苦しんで死ぬ。
 なんとかして反撃せねば。

「残念ですねお父様。ハンデが強すぎて戦えませんね」

「まあな、これでもお前を倒すのにはまだまだマシなハンデだ!」

 と言っても右に抱きかかえているから問題だ。腕をもう一本増やせばどうにでもなるが、こいつはそんなイメージを壊したくないだろうな。
 今でも表示が怖くなっているのにここでそんなことをすれば暴れるのは自明の理。
 何とかせねば……。

「ハテ様」

「どうした?」

「私がハテ様に迷惑ばかりかけて申し訳ございません」

「まあな」

「ですが、私も戦いと思います」

「いや、不可能だ」

 無謀すぎる判断だ。いくら、優秀な魔法使いの才能を持ったとしてもこの状況で戦うのは難しい。仮に戦うにしても触手を除いてどう対処することだ。触手を対処すれば肌にダメージが入る。前々からシウは結界が下手くそだから隙はありすぎる。

「いいだろう。私の代わりに攻撃に回れ」

「はい」

 不安が残る。

「それなら、私は移動に専念する」

「ありがとうございます」

 そんなことを言われても不安が残る。お前がどう倒すのか気にして成らない。シウに距離を広げて逃げる。

「あーら、私との戦いに逃げるばかりではいけませんよお父様?」

「どうかな」

「どうかなと言われてもこれではねぇ?」

 シウの触手が襲いかかる。それを避けて深海へと逃げる。やつの城まで逃げて宝石を盾にしようと思うがそうすると逆にブチギレてアルカが死ぬ可能性がある。
 極力、やつがブチギレてもおさまるような行動をしなければならない。

「おもいつきましたよ」

「攻撃か」

「ええ。それもいい方法です」

 シウの右手が人の手に戻った。が、逆に触手となっている左手が巨大化した。どうやら力で破壊するということか。

「そらそら!! 結界を破壊しますよ!!」

 力押しで結界を壊しに来た。さすがにこれは痛いな。

「今です!!」

 力押しで結界に触れた瞬間だった。結界から無数の槍が生えてシウに向かって飛んでいった。これはアルカが作った魔法で自分の魔力ではシウを攻撃するのが不可能。ならば、ハテの結界に付着している魔力を得て槍を放つ。
 当然、水中の抵抗を無視しているので速い。

「くっ」

 シウは右手で青い結界を張り弾いた。

「失敗」

「いや、成功している」

「え?」

 成功したのさ。シウは自分が弱いと見下した者がシウを傷つくのなら以上に怒る。

「て、てめぇ……」

 ほおら、怒り始めた。

「てめぇ! クソ人間が何をしやがるぅ!?」

「ひ……」

 先までの上品さとはかけ離れ品が無い言葉をならべ始めた。

「ンだこらぁ? あぁ!!
 てめぇ、親父の力を貸してもらっているクセに偉そうな攻撃をふっかけてきてよぉ。
 名前がぐらい聞かせろよクソ人間?」

「ア……ゴリョウです」

「ゴリョウだとぉ!!」

 シウが咆哮をあげた。それは水を震わせるほど恐怖の咆哮だ。

「て、てめぇ……アタシの前でゴリョウとか名乗ったな?」

「は、はい……」

「このクソ女があああああ!! 傷つけるどころか親父に力を借りてのうのうと神を名乗っているクソどもと同じ名前をかたりやがる!!
 ああ、怒って仕方ない! ぶっ殺す!! ぶっ殺す!! ぶっ殺す!!」

 攻撃されたことに異常な怒りだ。シウのプライドの高さは異常で子供たちの中でもずば抜けて高い。普通なら傷つけられても「まさか」、「なかなかやるな」ですむのが普通。しかし、シウの場合は「ぶっ殺す」になるのだ。

「そうそう、シウ。面白いことを教えてやろう」

「その槍はゴリョウと私の合作だ。つまり、私の方から魔力を入れると」

「あ……」

 シウの結界に刺さった槍が膨らんでいる。これは、私の魔力を通して槍を爆発させる。触角のシウの魔力よりも私の魔力が圧倒的に多い。よって、起きるのは1つ。
槍の大爆発だ。

「ぎゃあああああ!!」

 槍の爆風がシウを襲いシウはもだえた。

「ぐおおおおお……」

 苦しむシウはあたりを見渡した。触手は相変わらずそのままだが、一応はジッとしている。
 シウの顔の右半分が火傷を負っている。どうやら、ダメージは高い。

「い、いい……」

 シウが私とアルカに傷つけられた部分をおさえている。少しの傷だが異様に怒っている。

「いまいましいぃ!! クソ人間がぁ!!

 何の力もないクセに親父の力を自慢げに振りかざしやがってぇ!! むかつくんだよぉ!! ありんこの分際でよぉ!!」

「ひぃ!」

「てめぇらなんざアタシや兄弟たちと比べてザコのクセに何で親父から力をありがたくえられるんだよぉ!?
 おかしいだろぉ!!」

「ひぃ……!」

「……」

 シウが黙り込んだ。何をする気だ。

「ああ、ダメダメだ。こうなったら本気を出すしかない。親父相手でも容赦せずやるしかないな。
 本体から少し力を借りるぜ」

「何!?」

 バカな! こんな所で本体の一部でも出すと世界がどうなるのかわかったものではない!!

「よせ、力を行使するな!!」

「だったら止めてみなよ親父ぃ!!」

「まさか……」

 そうか。シウは私の戦いに勝つため本気で倒そうとするのか。まったく我が子ながら恐ろしい。いいだろう、止めてやる。

「アルカ」

「はい」

「これからお前を素で水中に泳がせる」

「え?」

「なあに。対シウ用の力は入れてある生体改造だ。お前なら使いこなせるさ。あのとっさの攻撃でいい連携が通じた。
 後は私をおとりにして攻撃しろ」

「わかりました!」

 私たちは結界の中でアルカを生体改造した。
 シウは巨大な青い丸い物体となった。そして、大量の青い触手があらわれまるでクラゲのようだ。これが、シウの本当の姿だ。大きさはクジラよりも大きいが本体は海を全てのみこむほど巨大だ。
 ここからが正念場だ。


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